「地下だけで1日を満喫できるのか?」
エキマチエリアの地下なら、それが可能なんです。
帽子も傘もいらないけれど、歩きやすい靴とぜひ着替え持参(理由はのちほど)でGO!
編集協力=小野 和哉(都恋堂) 篠賀 典子 取材・文=味原 みずほ 撮影=荒井 健 藤牧 徹也 中村 宗徳
参考:廣井 悠、 地下街減災研究会 「知られざる地下街」(河出書房新社)
地下鉄東銀座駅からスタート。歌舞伎座の地下カフェ「歌舞伎茶屋」(〔1〕)の和スイーツでエネルギーを充填したら、歌舞伎座を出て、日比谷方面へ。ひたすら直進していくルートだが、通路の中央に謎めく干支のモニュメントがあったり、駐車場に隣接するレトロ喫茶店があったり(〔2〕)と見所満載。
2018年3月にリニューアルした「日比谷シャンテ」に立ち寄り(〔3〕)、さらに通路を有楽町駅方面に歩いて、東京国際フォーラムの「相田みつを美術館」(〔4〕)に。
ランチには丸の内MY PLAZAの「土佐料理 祢保希 丸の内店」(〔5〕)がオススメ。かつて丸の内付近は入江だったらしい。数百年前は水中だった場所で、海の幸に舌鼓を打つのはなんともオツだ。
東京駅と皇居を結ぶ「行幸通り」の地下通路は、毎週金曜日にマルシェを開催(〔6〕)。
北自由通路を通って 「八重洲地下街(ヤエチカ)」へ。ここは1965年(昭和40)に誕生し(エキマチ内での同級生は有楽町の「東京交通会館」)、かつては"東洋一の大地下街"と呼ばれた歴史ある場所だ(〔7〕〔8〕〔9〕)。
ちなみに八重洲地下街には中央区と千代田区を分ける見えない区境が存在している。その他、とある理由で天井が傾いている『アロマ珈琲』(〔9〕)など、小ネタ盛りだくさんの空間でもある。
八重洲地下街を出て、「東京駅一番街」に沿って北上。この東京駅一番街は、1953年(昭和28)に「東京駅名店街」としてオープンしたのが前身。2005 年(平成17)に現在の名称に変わり、さらに2013年(平成25)にリニューアルされ、パワーアップ。「東京キャラクターストリート」「東京ラーメンストリート」「東京おかしランド」など、充実した施設が揃った地下街だ。地下一階通路には時間帯に合わせて光の量や色を調整する仕組みも導入されている。
東西線の通路に出たら、朝日生命大手町ビルの地下へ。「朝日生命プロムナードギャラリー」(〔10〕)でアートを堪能。ギャラリーを出たら通路を北上すると、「行ってこい階段」に遭遇。丸ノ内線の下をくぐるという体験ができる(「TOKYO地下道歴史発見隊!」参照)。
いよいよゴール。感動のフィナーレは、大手町に湧く温泉にて(〔11〕)。散歩の疲れが温泉で一気に癒えるはず。
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〔1〕東銀座の地下で歌舞伎風情を満喫
歌舞伎座地下に広がる木挽町広場。その一角に佇む風情ある茶屋ではうどんやカレーなどの軽食、ぜんざいなどの甘味もいただける。人気の歌舞伎あんみつは、隈取の焼印が押されたかるせん付きでSNS映えも◎。歌舞伎座ベーカリーで毎日焼き上げる隈取付きのあんぱんなども購入できる。
人気の歌舞伎あんみつ600円。緑茶付き。
店内ではうどんなどの軽食も味わえる。
隈取キューブ3種セットが手みやげに人気です(小池菜穂子さん)。歌舞伎茶屋
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〔2〕駐車場内というシュールなロケーション
銀座の華々しい地上世界とは裏腹に、地下に広がる西銀座駐車場。銀座駅数寄屋橋交差点改札からほど近い駐車場入り口に待合室という名の喫茶店が営業している。ガラス張りの店内から眺められるのは地下感あふれる駐車場の景色。1970年からそこに佇み、銀座で働く人々の憩いの場所となっている。すぐ近くに同じく喫茶店の「第2待合室」も。
駐車する様子を眺めながらのくつろぎ時間もオツ。第1待合室
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〔3〕東宝発祥の地に映画スターの手形が並ぶ
30周年をむかえた日比谷シャンテが開業以来最大規模で行ったリニューアルに合わせて、シャンテと地下鉄駅を結ぶ地下通路に移設された手形レリーフ。往年の映画俳優や歌手、海外スター、ドラえもんなど総勢77名の手形やサインを壁面にまじまじと見ることができる。スターたちの生き方が表れた手形に自分の手を重ね合わせてみてはいかが?
大きい手、小さい手、丸い手など個性豊か。The Star Gallery
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〔4〕心にじんわり沁み入るアートなひととき
けい藻土の壁や床で造られた心安らぐアート空間にも立ち寄りたい。ここでは『にんげんだもの』などで知られる書家・詩人の相田みつを作品を展示。特徴ある7つの展示室を思い思いに鑑賞できる。館内にはくつろげるスペースもあり、ホットコーヒー200円を片手に、詩を思い返して思いに浸るひとときも。
相田みつを美術館
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〔5〕ランチは南国土佐を感じる鰹たたき定食
地下にいながら土佐の潮風を感じられる鰹たたき定食が味わえる。こちらは1917年(大正6)創業、土佐料理発祥の名店『司』の姉妹店。伝統の一本釣りにこだわったカツオのみを使用する。鰹本来の旨味や香りを生かすため炭火焼で皮目はパリッと香ばしく、分厚くカットされたねっとり弾力のあるレアな赤身は食べ応えあり。
ポン酢でいただく鰹たたき定食1300円。
土佐漆喰の温もりある和モダンな店内。土佐料理 祢保希 丸の内店
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〔6〕毎週金曜に出現するマルシェでお買い物
丸ビルと新丸ビルの間に延びる行幸地下通路に、金曜のみ定期開催されるマルシェがある。土づくりからこだわった旬の野菜や果物をはじめ各地の郷土の食材と出合うことができる。甘酒や黒ニンニク、豆大福、食パン、シフォンケーキなどの作り手がそこにいるので会話が弾んでしまうことも。買い物バッグを忍ばせて出かけよう。
行幸地下通路の両側に20店ほどが軒を連ねる。
通勤で行き交う通りをさまざまな野菜が彩る。丸の内行幸マルシェ×青空市場
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〔7〕「八重洲」の由来をご存じですか?
ウォッチしていなければ素通りしてしまいそうな八重洲地下街のとある壁に注目を。この一角は江戸期の八重洲周辺を浮世絵や古地図の陶板画で見る歴史コーナー。八重洲の語源や水の都をしのばせる浮世絵、人工的に造られた城郭都市"江戸"の古地図をじっくり眺めることができる。しばし八重洲の歴史エッセンスを注入してみよう。
さりげなく八重洲の歴史を学べるスポット。
八重洲地下街案内所にはヤエチカマイスターが常駐。ヤエチカのことなら何でもお答えします。(左から室井美香さん、山田香生里さん)EDO-TOKYO-YAESU HISTORY
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〔8〕2つの区をまたぎながら歩いてみよう
東京駅の住所は千代田区丸の内。だけど、地続きの八重洲地下街(通称ヤエチカ)は中央区八重洲。ということは、区境がちょうどこの辺りにあるはず。グランルーフフロントとヤエチカの間を南北におよそ300m延びる外堀地下1番通りがいわばその境目なのだ。
写真で見ると右側が千代田区、左側が中央区。千代田区と中央区の区境
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〔9〕謎の構造をした昭和レトロな喫茶店で一服
店内は階段を数段降りた半地下のフロアで、不思議なことに天井も斜め。この真上に地下駐車場のスロープがあるのだとか。そんな光景を眺めながら飲みたい、アルコールランプのサイフォンで淹れるコーヒーは、直火式で焙煎した豆を使用しているため、えも言われぬ香ばしいアロマ。このおいしさを心ゆくまで味わって欲しいからと、ブレンドはお代わり一杯無料だ。
なじみ客で賑わう1970年(昭和45)創業の老舗喫茶。アロマ珈琲
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〔10〕日本画壇の巨匠の作品に気軽に触れる
落ち着いた雰囲気の地下通路に突如ギャラリーが。日本画壇の第一人者として活躍した平山郁夫画伯の作品が展示されている。ギャラリーを運営する朝日生命保険相互会社のカレンダー原画を手がけるなど同社とゆかりもあるのだとか。2022年頃に建て替え工事が始まる予定とのことで、この昭和風情の趣とともにじっくり味わいたい。
人通りも少なくじっくり芸術鑑賞できる。朝日生命プロムナードギャラリー
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〔11〕都心の地下にある天然温泉で疲れを癒やす
散歩の最後は地下1500mから湧出する大手町温泉にゆったりつかって足の疲れをじんわりほぐして。ほんのり黒く、とろみのあるお湯は保湿効果も高く、疲労回復にもよいのだそう。90分1080円のビジター料金で温泉入浴でき、女性のみ+540円で岩盤浴も。320円でタオルもレンタルできるので、手ぶらで湯浴みを満喫しよう。
スポーツジムの中に併設された温泉施設(写真提供=SPA OTEMACHI)。
入り口は大手町駅直結という便利な立地。SPA OTEMACHI