エキマチご当地ソング

今でこそほとんどリリースされなくなったが、昭和の頃には地名が入ったレコード、いわゆるご当地ソングが多数リリースされていた。
そもそも、ご当地ソングでエポック・メーキングとなったのは、1966年にリリースされた美川憲一の「柳ヶ瀬ブルース」といわれている。
それまでも地名が入ったレコードは制作されていたが、本作品のヒットをきっかけに全国各地を舞台としたご当地ソングが急増した。
それらのレコードの中でも東京の地名が入ったレコードは群を抜いて多い。なかでも、銀座と新宿はそのツートップだろう。
その2つの街ほどではないが、東京エキマチエリアの街々も題材に使用されることが少なくない印象だ。
そんなレコードをジャケットとともに振り返ってみたい。

文=ガモウユウイチ
音楽ライター。出版社で書籍の編集者などを経て、音楽雑誌編集部でエディターとライターを経験。2004年からフリーの音楽ライターに転身。また、ベーシストとしても、アイドルや声優などのバックを担当するなど、幅広く活動中。
編集協力=小野 和哉(都恋堂)

    • 【東京駅】吉田拓郎 「大阪行きは何番ホーム」(1984年)
    • 【東京駅】吉田拓郎 「大阪行きは何番ホーム」(1984年)

    【東京駅】吉田拓郎 「大阪行きは何番ホーム」(1984年)

     80年代に入って打ち込み(PCなどによって制作した演奏データ)の導入など、それまでのイメージから脱却を図っていた吉田拓郎が原点に立ち返り70年代のサウンドテイストで作り上げたアルバム『FOREVER YOUNG』に収録された曲。夢や希望を持ち東京で生活してみたものの、それらが無くなり東京駅から大阪へ帰るという内容だが、このとき拓郎自身2度目の離婚をした直後。自身の思いを織り込み、「家を捨てたんじゃなかったのか」というサビで自らにも問い掛ける。人生を真正面から歌った内容と、アーシーなサウンドで、今では80年代の名作と評価されている。

    • 【丸の内】市丸、鈴木正夫、喜久丸 「東京音頭(丸の内音頭)」(1958年)
    • 【丸の内】市丸、鈴木正夫、喜久丸 「東京音頭(丸の内音頭)」(1958年)

    【丸の内】市丸、鈴木正夫、喜久丸 「東京音頭(丸の内音頭)」(1958年)

    東京ヤクルトスワローズの応援歌としても人気の「東京音頭」。かつては東京オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)も応援歌として使用していた。もともとは1932年に「丸の内音頭」として誕生して、日比谷公園での盆踊り大会で披露された。歌詞に丸の内、二重橋、三宅坂、数寄屋橋などが登場する、名所紹介ソングだ。A面を藤本二三吉が、B面を三島一声が歌唱したレコードも発売され、評判を呼んだようだ。1933年には「東京音頭」に改題され、小唄勝太郎と三島一声の歌唱でレコード化。1958年には、市丸、鈴木正夫、喜久丸が歌いロングヒットを記録した。

    ※「丸の内音頭」のオリジナル盤はSPのためジャケットなし

    • 【有楽町】フランク永井 「有楽町で逢いましょう」(1957年)

    【有楽町】フランク永井 「有楽町で逢いましょう」(1957年)

    フランク永井を大スターに押し上げた楽曲で、もともとは有楽町そごうのコマーシャルソングとして制作された。そごう開店に際し、当時のアメリカ映画『ラスベガスで逢いましょう』からタイトルを拝借して、「有楽町で逢いましょう」のキャッチフレーズが決定。本楽曲のヒットや、同名の歌番組が放送されるなどして、流行語となり東京の中心街として有楽町が一躍有名となった。2008年には、有楽町マリオンのからくり時計前に、歌碑が建立された。

    • 【日本橋】五木ひろし 「日本橋のうた」(1980年)

    【日本橋】五木ひろし 「日本橋のうた」(1980年)

    大ヒットを記録した「倖せさがして」と「ふたりの夜明け」の間に挟まれて発売された隠れた佳曲。作曲は、五木ひろしの3度目のデビューの際に尽力した恩師の遠藤実。ヒットした両楽曲と比べても引けをとらない五木節にあふれた楽曲だ。江戸時代から続く歴史のある日本橋の魅力をたっぷりと織り込み、パリやニューヨークと比較しても遜色ない街と歌う。B面にも「日本橋音頭」を収録、日本橋への愛情が伝わってくる。

    • 【大手町】THE COLLECTORS 「東京ダンジョン」(2016年)

    【大手町】THE COLLECTORS 「東京ダンジョン」(2016年)

    デビュー以来30年余りの活動歴を誇るネオモッズ・バンド、THE COLLECTORSが2016年にリリースしたアルバム『Roll Up The Collectors』に収録された楽曲。歌詞には、渋谷の地下と並んで大手町の地下が取り上げられており、もはや普通の街と変わらない地下街の魅力が描かれている。なお、彼らは10周年、20周年、30周年の記念ライブは全て日比谷公園大音楽堂(野音)で行っており、東京エキマチエリアとも意外と縁がある。

    • 番外編「銀座」のご当地ソング

    番外編「銀座」のご当地ソング

    高峰秀子 「銀座カンカン娘」
    美川憲一 「銀座・おんな・雨」
    小西博之、清水由貴子 「銀座の雨の物語」
    石原裕次郎、牧村旬子 「銀座の恋の物語」
    美空ひばり 「銀ブラ娘」
    フランク永井 「西銀座駅前」
    スターダスト・レビュー 「銀座ネオン・パラダイス」
    藤圭子 「銀座のお恵ちゃん」
    天地真理 「銀座ひとりぼっち」

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