ぶらりエキマチ散歩
八重洲

Vol. 13(2017年06月10日号)八重洲 地下迷宮の探検

新陳代謝を繰り返し 拡大し続ける駅直結迷路

 八重洲の地下街はまるで迷路だ。何度出かけても、どこからどこにつながっているのかわからなくなり、彷徨(さまよっ)った経験を誰もがもっているだろう。
 地下街が一気に拡大の様相を見せ始めたのは、昭和30年代のこと。「もはや戦後ではない」の名言で知られる1954年、東京駅八重洲口が完成すると、百貨店『大丸』が東京駅に進出。東京駅名店街と並び、八重洲口周辺が賑わいだした。そこで昭和31年、地下駐車場が計画され、駐車場の上に広大な地下街が造られることになった。
 「ここは昔から迷路でしたよ」と笑うのは、『八重洲地下街(通称ヤエチカ)で、1969年から『カレーショップ アルプス』を営む大山健さんだ。
 「地下街は東京駅側から始まってね。名店街が旅行者のための地下街だとすると、ヤエチカは庶民のために造られた地下商店街。東京駅から日本橋へ抜ける通路に都道もあるんですよ」
 名店街の下には入浴施設があり、夜行列車で訪れた人々がお得意先に向かう前に汗を流したという。また、ヤエチカには日本初のセルフサービス式カフェテリアや、交番なども設けられた。
 時代とともにヤエチカの顔ぶれは変化したが、地下全体の変貌ぶりはその上をいく。名店街の一部分は東京駅一番街となり、東京ラーメンストリートや限定おかしが手に入るおかしランドなどが賑やかこの上なし。さらに、「ここは江戸?」と見紛う黒塀横丁でしっぽり昼酒を嗜んだり、定食充実のグランルーフや、ヤエチカの奥に小粋なグランアージュへも続く。複雑に入り組んだ小路がどこまでも延び、迷路は巨大迷宮と化した。
 「階段をひとつ間違うと、もうどこに出たかわからなくなっちゃう」と、大山さんが笑うように、歩くほどに発見のある街に。暑さ寒さ、雨にも無縁で、いつだって探検日和なのだ。

  • 東西線地下通路

近未来的な美しさにリニューアル!

東西線地下通路

東京駅一番街のきらびやかな東京キャラクターストリートを抜けると、無機質な地下道が東西線へと誘う。古びた地下道の階段を下りると一転、突然、改装された真新しい連絡地下通路へ。東西線大手町駅は来年3月末までリニューアル工事中だが、連絡通路の一部はすでに完成。LED照明の明るさと、木肌を思わせる白×茶の柱が一列に整然と並び、気分は近未来へ、タイムスリップ!
  • EDO-TOKYO-YAESU HISTORY

八重洲は江戸時代より東に移った?

EDO-TOKYO-YAESU HISTORY

ヤエチカの一角に並ぶのは、浮世絵や古地図の陶板画。かつて、江戸城東側には大名屋敷が立ち、外堀(現・外堀通り)を越えると町人町が広がっていた。江戸城下に記された「八代洲(やよす)河岸」が後に「八重洲」と呼ばれ、1872年(明治5)には、現・丸の内側を指す町名に。当時の八重洲は日本橋区だったよう。東京駅が開業すると、八重洲町は駅周辺となり、1954年、駅の東側(現・八重洲)へと移ったのだ。
  • ACORN

充実したタパスでワインを楽しむ

ACORN

「チーズにも四季があるんです。草で乳の成分が変わりますから。はちみつやジャムとの相性でも楽しみは無限大」と、店長の八尾村忠俊さん。生ハム、カキの充実っぷりも見事。まずは、日替わりのタパス・チーズ・生ハムのACORN盛合せ1680円を。約60種も揃うワインで順々に攻めるべし。
◎11:00~23:00(ランチ~16:00)、無休。千代田区丸の内1-9-1グランルーフB1
☎03・5220・2527
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  • R.T.Oのレリーフ

進駐軍を驚かすために制作された巨大レリーフ

R.T.Oのレリーフ

地下通路で目を引くのが、巨大な石膏レリーフ。1947年、進駐軍の鉄道司令部(R.T.O)が丸の内駅舎に設置された折、「進駐軍を驚かそう」と待合室の壁に施された。名所旧跡などが彫られたレリーフを手がけたのは、日本人初のフランス政府公認建築士となった中村純平で、新鋭彫刻家として名を馳せた本郷新など、横浜高等工業高校(現・横浜国立大学)の教え子も携わった。グランルーフを通り階段下ってすぐ。
  • 千代田区と中央区の区境

2つの区をまたぎながら歩ける地下通路

千代田区と中央区の区境

ヤエチカとグランルーフフロントの間を南北に走る地下通路には、見えない区境線がある。しかも、八重洲とひと括りで言われているが、グランルーフフロントの住所は千代田区丸の内。じつは八重洲ではないのだ。また、落とし物が見つかると、通路の真ん中を境にして、グランルーフフロント側は鉄道会館が、ヤエチカ側は「八重洲地下街」が保管するそう。どちらで落としたかわからなかったら、両方に尋ねてみて。
  • アロマ珈琲

斜めになった天井の謎とは

アロマ珈琲

自家焙煎の豆をサイフォンで淹れるコーヒーを目当てに、昼夜賑わうコーヒー店。木造りの落ち着いた風情だが、レジ周辺の天井が斜めに。「地下駐車場へ入るスロープの下なんです」と、スタッフ。キッチンに立つと、壁の向こうから時折ガタガタと音が聞こえるそう。
◎6:30~21:30(土は7:00~21:00、日・祝日は7:30~21:00)、無休。中央区八重洲2-1八重洲地下街中4号
☎03・3275・3531
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  • 富山 白えび亭 東京駅店
  • 富山 白えび亭 東京駅店

東京駅一番街の新スポット グルメ街道で富山の宝を

富山 白えび亭 東京駅店

今春誕生した『にっぽん、グルメ街道』に全国の名物ご当地グルメが集結。そのひとつが、富山が誇る白エビの専門店だ。白エビが山盛りになった天丼1480円や、手むきの白えびを約90尾も乗せた刺身丼2480円が贅沢で美味。白エビだしのお吸い物も絶品。ホタルイカ、ブリとともに盛った丼も人気だ。
◎10:00~22:30LO、無休。千代田区丸の内1-9-1 東京駅一番街B1「にっぽん、グルメ街道」内
☎03・5223・0525
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  • ヤン・ヨーステン記念像

八重洲の語源となったお方を拝顔!

ヤン・ヨーステン記念像

「八重洲」という地名は、ヤン・ヨーステンという、オランダ船の船員に由来する。彼が乗っていたリーフデ号は、アフリカやハワイを経由し、1600年(慶長5)、豊後に漂着。その後、徳川家康の通訳として和田倉門外堀端に屋敷を与えられ、その界隈を「八代洲河岸」と呼ぶように。彼の銅像は、オランダ人のL・P・Jブラートの手によって造られ、1973年に設置された。
  • 東京駅八重洲パーキング

首都高から乗り入れできる降車場あり!

東京駅八重洲パーキング

八重洲地下街下に広がる東京駅八重洲パーキング(東・西)は、首都高八重洲線と直結。さらに、タクシー・ハイヤー利用時に使える降車専用の乗客降り口が! 地上に比べてスムーズに乗り付けられるうえ、降車後は八重洲地下街、東京駅へアクセス至便。1973年より、ビジネスマンや重役たちが利用している。また、駐車場はヤエチカでの買い物、新幹線・JR特急利用で割引サービスあり。
  • ヤエチカのチカ

階段を下りればそこにまた別空間あり

ヤエチカのチカ

ヤエチカにはところどころ、階下に続く階段が。下りてみれば、床屋さんのサインがくるくる回っている。「理美容サロンや医療機関などが地下2階に集まっているんです」と、八重洲地下街テナント営業部の小澤知子さん。ヤエチカの地下2階の下に地下駐車場が広がっていると思いきや、実は同じフロア。駐車場とは趣異なる落ち着いた空間で、上質なサービスが提供されている。
  • カレーショップ アルプス

ヤエチカ屈指の老舗

カレーショップ アルプス

1969年から営む老舗では、タマネギをラードとともにオーブンで焼いてから煮込む。それゆえ、甘くまろやかながら、後からスパイスがヒリヒリ。ボリューム抜群の柔らかなチキンカツ570円、麻婆豆腐カレー470円にファン多し。メニュー開発にも余念なく、新たな味との出合いも楽しみ。
◎10:00~21:30(土・日・祝日は~21:00)、無休。中央区八重洲2-1八重洲地下街外堀地下2番通り
☎03・3274・4002
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