Vol. 14(2017年08月10日号)大手町駅に囲まれたエリア
歴史や自然も息づくミラクルスポット
一見、無機質なオフィス街に見えるが、もとより歴史の名残が根付く街。あわせて、植生を再生させた今、人々が昼夜憩う姿が見られるように。
大手町は江戸時代、大名屋敷や将軍お抱え医師が暮らす街だったが、明治に入り、大蔵省、印刷局など、中央官庁が立ち並ぶ街となった。しかし、中央官庁の多くは、関東大震災が起こると霞が関へ移転。震災復興で区画整理が行われ、近代的モダニズムのビル建築が始まった。先陣をきったのは、木挽町から移転して仮本省を置いた逓信省(ていしんしょう)だ。連続アーチが印象的な独特な意匠の東京中央電信局を建築。その後、旧日清生命館(現丸ノ内野村ビル)など、建築美を誇るモダン建築が立ち並んだ。
戦後、地下鉄が開業すると、日本屈指のオフィス街へと加速。当時の面影を止(とど)めるのが大手町ビルヂングだ。1969年、千代田線が開業すると、倉庫からオフィス兼商業施設へと舵をきり、1階から地階にかけて喫茶や酒場、郵便局、銀行が入る地下商店街の様相に。朝はモーニング、夜は酒場として営業を始めた古参の『大手町バンブー』代表の竹内秀夫さんは、「地下鉄から出てきた人がみんなここを通るから、人の流れがすごくって」と、目を細める。「地下道ができるたびに、人の流れが変わっていったし、新入社員だった人が、今じゃ社長になったりしていますからね。ここも古くなりました」。
それでも、抑えた照明がかえって安心するとか、文化財として残せたら、という意見も耳にするという。
さらに近年は、自然再生の波が訪れている。3年かけて緑が鬱蒼としてきたオーテモリに加え、今春サンクンガーデンが整備。ビルの谷間に、江戸以来の植栽が織りなす森と渓谷が誕生した。他にも、隠れ家バーや一軒家レストランがあり、オフィス街らしからぬ、人肌を感じるオアシスとなっている。
東京駅を眺めて希有なカクテルを嗜(たしな)む
LEVEL XXI(レベルトゥエンティーワン) 東京會舘 バーラウンジ
◎11:00~21:30LO、土・日・祝日休。千代田区大手町2-2-2 アーバンネット大手町ビル21F
☎03・5255・1519
大手町のオアシスが新たに誕生!
大手町ファーストスクエア サンクンガーデン
◎大手町1-5-1
八角形が粋なデータ通信専用局舍
NTT DATA大手町ビル
◎大手町2-2-2
日本代表チームのユニフォームを展示
みずほ銀行 東京中央支店 みずほインフォメーション
◎大手町1-5-5 大手町タワーB2
日本茶の新しい味わいに出合う
紀伊(きの)茶屋 大手町ビル店
◎10:00~20:00(土の営業時は~18:00)、土不定・日・祝日休。大手町1-6-1 大手町ビルヂング1F
☎03・6268・0447
大手町では希少な一軒家ピッツェリア
LA MAREMMA(ラ マレンマ)
◎11:00~15:00LO・17:00~22:00LO(土は11:30~、~21:00LO)、日・祝日休。大手町1-5-1 大手町ファーストスクエア1F
☎03・3217・1222
喫茶店のDNAを受け継ぐ料理店
大手町バンブー
◎6:45~10:00・11:00~15:00・17:00~22:30、土・日・祝日休。大手町1-6-1 大手町ビルヂングB2
☎03・3211・0087
関東大震災後に登場した端正な古典様式
丸ノ内野村ビル(旧日清生命館)
◎大手町2-1-1
大手町駅の謎
最初は1946年に営団地下鉄(現東京メトロ)丸ノ内線が開業し、次いで1956年には東西線、その後、日比谷通りに千代田線、丸の内側に三田線が開業。締めは1989年、半蔵門線が完成し、都内最大のメガ地下鉄駅となったのだ。
ちなみに「大手町」駅ながら、都営三田線だけ住所的には「丸の内」。実は千代田線と開業時期が近く、用地確保に敗れてしまったのだという。千代田線大手町駅の北側に駅を作るだけの広い用地が無く、結果、現在の場所になったのだとか。
地下鉄開業の歴史に思いを馳(は)せながら歩くのも一興かと。