ぶらりエキマチ散歩
京橋

Vol. 17(2018年02月10日号)京橋1丁目

江戸から続く文化とアートの街!?

 日本橋から京橋へと続く、東海道(中央通り)の道筋に広がる京橋一丁目。江戸時代は、材木加工、大工、桶職人が集まる職人街で活気に満ちていたようだ。もとより江戸城に近く、五街道の起点そば。賑わう町の様子は絵の題材にもなり、江戸末期、晩年を迎えた浮世絵師の歌川広重はその一角に居を構え、京橋(旧・南伝馬町一丁目)の居宅から眺めた七夕飾りと富士山などを描き残している。しかも隣家は、狩野派のお屋敷だったそうだ。
 絵師を惹きつけた風景のみならず、1865年(慶応元)創業の『越前屋』には、戦前より美しい糸を求める人が来店。「今でもアパレル関係の方や手芸作家さんなどにもご来店いただいてます」(広報の内野さん)というから、時代を超えて、クリエーターゆかりの地となっているのだ。
 明治には、中央通りと並行する東仲通り(京橋美術骨董通り)に、古美術商が軒を連ねだし、1952年には当時まだ珍しかった〝美術館〟として『ブリヂストン美術館』(現在休館中)が開館。平成に入ると今度は、骨董屋に交じって現代美術のギャラリーが並ぶように。
 『ISLAND GALLERY』店長・吉田理恵さんが「大家(たいか)を扱う銀座に対して、京橋は小規模でも作家さんがみんな個性的なんです」と言えば、アートギャラリー『メゾン・ド・ネコ』の平きょうこさんは、「オフィス街の一面もありつつ、江戸から連綿と続く文化的な空気をみなさん、大事にされているんです。4月にはアンティークと現代アートを回遊できるフェスもありますよ」と、教えてくれた。
 他にも、映画監督がこっそり通った『伊勢廣』で職人技と風情を堪能したり、『甘味カフェ しずくshizuku429』で店主夫妻が集めた作家の作品に心躍ったり。作家もアート好きも、こぞって感性が刺激されるスポットが、随所に散らばっている。

  • 甘味カフェ しずく shizuku429
  • 甘味カフェ しずく shizuku429

心をとろかすアート空間と甘味

甘味カフェ しずく shizuku429

営むのは『ブリヂストン美術館』ティールームをプロデュースしたチーム。名物だったクラシックレアチーズケーキセット1200円のほか、上野広小路『うさぎや』の餡を用いた甘味、ババロアも評判だ。内林武史氏や若手作家の作品で彩られ、ワークショップなどのイベントも不定期で開催。
◎地下鉄銀座線京橋駅7番出口徒歩1分。8:00~18:00(土は10:00~)、日・祝日休。中央区京橋1-5-8 三栄ビル1F
☎03・6214・0429
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  • 歌川広重住居跡

江戸時代に絵師が暮らした痕跡

歌川広重住居跡

「東海道五十三次」で知られる歌川広重が、1849年(嘉永2)から死去するまでの10年間、暮らした場所。御用絵師の狩野四家の一つ、中橋狩野家屋敷隣で、2階建てだったと伝わる。なかでも「名所江戸百景」は、大鋸(おが)町と呼ばれたこの地で暮らした頃の代表作。2階から眺めた情景も描いた。現在は工事中で面影はなく、白囲いに張られた案内板が往時を伝えている。
◎京橋駅6番出口徒歩3分。京橋1-9
  • メゾン・ド・ネコ

路地裏で出会ういきもの作品

メゾン・ド・ネコ

路地を歩くネコについていったことを機に、2015年よりアートギャラリーを開くことに。「生きとし生きるもの」をテーマにした個性あふれる作品を扱う。週ごとに展示が替わり、足を運ぶたびに出会いがある。2月9~13日は「まちねこ美術館写真展」、23~27日は「関西書票協会作品展」。
◎京橋駅6番出口徒歩2分。12:30~19:00(日・最終日は~17:00)、水・木休(展示により変更あり)。京橋1-6-14 佐伯ビル2F
☎03・3567・8880
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  • 伊勢廣 京橋本店
  • 伊勢廣 京橋本店

巨匠が愛した風情と味

伊勢廣 京橋本店

鶏肉専門店として1921年(大正10)に創業し、後に姥目樫(うばめがし)備長炭で大ぶりな身を焼き上げる焼き鳥店に。店でさばく丸鶏のほか、千住葱、原木シイタケなど素材にも目が配られ、香味の豊かなこと。映画監督の故・小津安二郎も通い、一人静かにフルコース(現在6480円)を味わったという。
◎京橋駅7番出口徒歩2分。11:30~14:00・ 16:30~21:00(土は16:30~20:30)、日・祝日休。京橋1-5-4
☎03・3281・5864
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  • 下井美術
  • 下井美術

楽(らく)茶碗が醸す手捏(てづく)ねの静謐さ

下井美術

千利休の思想を反映し、樂家初代長次郎が創設した楽焼。手捏ねの茶碗一つを、精魂を込めて焼きぬく黒茶碗が名高く、「精神性の高い茶碗だと思います」と、店主の下井さん。樂家初代から当代15代の茶碗を扱う、東京では希有な専門店だ。
◎京橋駅6番出口徒歩3分。10:00~17:00(土・日・祝日は~18:00)、不定(月に2日間)休。京橋1-14-6 京橋宏陽ビル1F
☎03・3535・2522
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  • ISLAND GALLERY

個性あふれる視点が楽しい写真アート

ISLAND GALLERY

駒沢から20年前に京橋に移転。木版画家の名嘉睦稔(なかぼくねん)氏の常設画廊だったが、写真好きのオーナーが「アートとして日本に根付かせたい」と8年前よりアート性の高い写真家の作品を展示。モノクロ写真に手彩色を施す安斉紗織氏や、アーティストでもあるTHE ALFEEの坂崎幸之助氏なども扱い、視点や技法の多様さを実感。2月23日~3月4日は安斉紗織彩色写真画展「百花繚乱」。
◎京橋駅7番出口徒歩2分。11:00~19:00、不定休(会期中は無休)。京橋1-5-5 B1 
☎03・3517・2125
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  • モリイチ

創業145年を誇る文具のパイオニア

モリイチ

1872年(明治5)、畳表(たたみおもて)の店として四谷で創業。後に京橋に移転し、オフィス設計や文具を扱うように。かつての建物は郵便局を兼ねたロマネスク様式だったとか。1987年竣工した京橋店は外国人客も数多く、九ポ堂凸版印刷ポストカード216円、万年筆カクノ1080円が人気。切手、TOKYO 2020公認オリパラグッズも販売。
◎京橋駅7番出口徒歩2分。9:00~18:00(土は11:00~17:00)、日・祝日休。京橋1-3-2
☎03・3281・3228
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  • 手芸の越前屋
  • 手芸の越前屋

糸商から始まった圧巻の刺繍専門の手芸店

手芸の越前屋

美しい糸は単色だけで500色! 他にもサテン、ラメ、毛糸などと豊富だ。幕末に創業し、戦前には海外の輸入糸を扱い始めたとか。東北のこぎん刺しをコースターにするオリジナルキット1944円や、ストラップに使える「ちいさいおうちビスコーニュキット」756円のほか、道具、本も揃い、4世代で通う常連や海外からの客も訪れる。
◎京橋駅7番出口徒歩4分。10:00~18:00、日・祝日休。京橋1-1-6
☎03・3281・4911
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  • ビルの新築工事の壁画

工事中でもやっぱりアート!?

ビルの新築工事の壁画

楓川久安橋公園隣のビルが工事中で囲われているのだが、その白囲いの壁に来夏頃まで、界隈の歴史トピックスや江戸の習わしが描かれており、興味深い。
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