ぶらりエキマチ散歩
丸の内

Vol. 18(2018年04月10日号)一丁紐育(ニューヨーク)

大正時代からずっと最先端をいく街

 東京駅が1914年(大正3)に開業すると、丸の内の中心は馬場先通りの「一丁倫敦」から、行幸通りへと北上。それに伴い、「一丁紐育」時代へと突入する。英国式煉瓦造りに比べ、1900年前半に輸入された米国式は効率よいフロア活用と工期短縮が可能。「オフィスビル建設計画があったなかで、東京の顔となる東京駅前にふさわしい、最新鋭で一流の建築物をと導入したんです」と、丸の内開発を一手に請け負う『三菱地所』広報の木寺恵理さん。
 場所は駅と皇居の狭間。高さ31mの丸の内スカイラインに揃えた巨大な白い高層ビル群に、実業家たちがオフィスを構えると、丸の内は一気に日本の経済の中心地へと発展する。
 そのなか、異彩を放つ建物が『日本工業倶楽部会館』だ。炭鉱夫と織女(しょくじょ)の像は、現存する日本最古のセメント彫像。総支配人の鈴木治郎さんは「日本特有の歴史のせいでしょうか。労働者の像の下を実業家のトップが出入りする玄関を設けた造りは、世界的にも珍しいんですよ」と、教えてくれた。
 そして終戦、復興、東京オリンピックを経て、1970年(昭和45)年に丸の内スカイラインは撤廃した。低層商業フロアに名残が見られるものの、200m近い高層ビルへと代わり、ブランドショップが軒を連ねて、世界中の人々が行き交う街へ変貌を遂げた。
 そして、ユニークな最先端スポットも誕生している。なかでも『インターメディアテク』は、旧東京中央郵便局時代の内装や空間を生かした学術標本展示が刺激的。「何かを感じてくれれば、それでいいんです」とは、東大と共に運営する『日本郵便』の川本高輝さん。
「ビジネス一辺倒の街から、東京を代表するグローバルな街へ」(木寺さん)を体現するように、丸の内は今なお、最先端を突き進んでいる。

  • 一丁紐育(いっちょうニューヨーク)
  • 一丁紐育(いっちょうニューヨーク)

高さ百尺に揃えた日本初の高層オフィス街

一丁紐育(いっちょうニューヨーク)

東京駅と行幸通りが整備された大正後期、東京海上ビル(現・東京海上日動ビル)を皮切りに、米国式ビルが建設ラッシュに。また、1919年(大正8)に市街地建築物法が制定されると、高さ百尺(31m)の丸の内スカイラインが決定。丸ビル、日本郵船が軒高を揃えた。さらに関東大震災後、白亜の巨大高層ビル群が連なると、丸の内はまるで、ニューヨークのようだったとか。

写真提供=三菱地所
◎JR東京駅丸の内中央口すぐ。
  • 丸の内パークビルディング

光注ぐ昭和初期建築のファサード

丸の内パークビルディング

かつて三菱商事ビル、古河ビルと隣接していた丸ノ内八重洲ビル。3つがまとまって2009年(平成2)、三菱一号館、丸の内ブリックスクエアを擁する巨大高層ビルへと変貌したが、1928年(昭和3)の近代建築の一部である、小松石造りのファサードが復元されている。連なるアーチが重厚で優美。くぐれば、外光を取り入れた明るい回廊だ。
◎JR東京駅丸の内南口徒歩4分。千代田区丸の内2-6-1
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  • 東京海上日動ビル
  • 東京海上日動ビル

一丁紐育の幕開けとなった先駆的アメリカ式ビル

東京海上日動ビル

鉄筋コンクリート造りの7階建てアメリカ式オフィスビルとして旧「東京海上ビルディング(旧館)」が1918年(大正7)竣工。設計は曽禰達蔵(そねたつぞう)で、辰野金吾と共に英国人建築家ジョサイア・コンドルに学んだ。それまでの英国式赤煉瓦造りから一転した、白亜のビルは効率性を重視。だが、角が丸みを帯びた優美さも併せ持っている。1974年(昭和49)に、建て替えられた。

写真提供=三菱地所
◎地下鉄大手町駅D1出口すぐ。丸の内1-2-1
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  • 行幸通り
  • 行幸通り

近代化の中心地は皇居と東京駅をつなぐ道

行幸通り

東京駅の開業に合わせて、内濠からまっすぐに駅へと延びる40間(約72m)道路が1914年(大正3)に一部開通した。さらに、関東大震災の復興整備で、和田倉門交差点まで延び、一丁紐育の中心地はこの行幸通りとなる。現・新丸ビルが立つ場所は当時「東京館」が建設中だったが、戦争激化で中止となった。

写真提供=三菱地所
◎東京駅丸の内中央口すぐ。丸の内1・2
  • 日本工業倶楽部会館

一丁紐育を牽引する実業家たちの社交場

日本工業倶楽部会館

屋上の石像が印象的な建物は、1920年(大正9)建築。幾何学的意匠や渦巻き植物模様が美しい、日本では数少ないセセッション様式だ。創設以来、財界人が集う社交場で、正面玄関から入れるのは今も会員のみ。だが、別館から入る「実業家資料室」や、入り口の異なる「信託博物館」は誰でも利用可能だ。1997年(平成9)、会館西側を登録文化財として保存し、別館に組み入れる形で建て替えている。
◎JR東京駅丸の内北口徒歩1分。丸の内1-4-6
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  • 三菱UFJ信託銀行 信託博物館(日本工業倶楽部会館)
  • 三菱UFJ信託銀行 信託博物館(日本工業倶楽部会館)

三菱UFJ信託銀行 信託博物館(日本工業倶楽部会館)

入場無料の『三菱UFJ信託銀行 信託博物館』は国内外の信託の歴史、小説のシーン、著名人の思いなどを展示。
◎JR東京駅丸の内北口徒歩1分。10:00~17:30入館、土・日・祝日休。丸の内1-4-6 1F
☎03・6214・6501
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  • 実業家資料室(日本工業倶楽部会館)

実業家資料室(日本工業倶楽部会館)

要予約の『実業家資料室』は実業家の伝記をはじめ貴重資料の宝庫。岩崎小弥太、渋沢栄一などの肉筆書簡も保存。
◎JR東京駅丸の内北口徒歩1分。9:00~17:00、土・日・祝日休。丸の内1-4-6 別館5F
☎03・3281・1717
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  • 欧風ダイニング ポールスター

客船で愛された元祖ドライカレー

欧風ダイニング ポールスター

明治時代の欧州航路客船「三島丸」で考案された味を、当時の調理長より受け継ぎ再現。1952年の創業時より、牛挽き肉の元祖ドライカレー1500円(ランチはドリンク、デザート付き1600円)が人気だ。フライドオニオンが名脇役で、日本郵船OBも懐かしむ。
◎東京駅丸の内北口徒歩4分。11:00~14:00・17:00~23:00(土は11:00~17:00)、土(20名以上の予約は対応)・日・祝日休。丸の内1-4-5三菱UFJ信託銀行本店ビルB1
☎03・3217・7411
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  • インターメディアテク
  • インターメディアテク

革新的&実験的! 東大の学術標本をフリーで堪能

インターメディアテク

東大の学術標本を無料で常設展示。展示ケースなども実際の研究室で使われたもので、唯一無二の展示表現が実験的かつクールだ。時折、骨格標本の組み立てなども実演。館内は撮影禁止だが、帝大医学部時代の階段教室だけは撮影スポット。しかも、原則毎月最終金曜18時から蓄音機音楽会が開かれ、当時のイスにも座れる。

研究成果も買える。飲み会用の乾杯式アミノ酸サプリメント1600円、体力式アミノ酸サプリメント2270円とゼリー18個2700円は疲れたときに。

(スライド1枚目)空間・展示デザイン©UMUT works
◎JR東京駅丸の内南口徒歩1分。11:00~18:00(金・土は~20:00)、月(祝は翌火)休。丸の内2-7-2 KITTE2・3F
☎03・5777・8600(ハローダイヤル)
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  • 東京ステーションギャラリー
  • 東京ステーションギャラリー

ジオラマが映し出す、丸の内の景観歴史

東京ステーションギャラリー

丸の内北口改札を見渡す2階回廊に3つのジオラマが並ぶ。駅開業当初の一丁倫敦時代、一丁紐育を引き継ぐ前回の東京オリンピックの年、そして現代。東京駅百周年を記念して、50年ごとに切り取り制作したもので、俯瞰で見れば、丸の内がいかに変貌を遂げてきたかが手に取るよう。

(スライド1枚目)1964年の丸の内(ジオラマ)制作:京都工芸繊維大学 木村/松隈研究室+学生有志
(スライド2枚目)2014年の丸の内(ジオラマ)制作:日本大学生産工学部 廣田研究室 亀井/渡辺研究室
◎JR東京駅丸の内北口すぐ。入館料は展覧会ごとに異なる。10:00~17:30入館(金は~19:30入館)、月(祝日の場合は翌火/会期最終週は開館)・展示替え期間休。丸の内1-9-1
☎03・3212・2485
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  • 三井住友銀行東館 ライジング・スクエア
  • 三井住友銀行東館 ライジング・スクエア

丸の内のパブリックスペースから世界を見渡す

三井住友銀行東館 ライジング・スクエア

2015年に入場無料のミュージアムが誕生。1階は地球儀を回すとリアルタイムの航空、気象など、地球の今がわかる『アース・ガーデン』で、不定期に企画展、フリーコンサートが。また、2階は『金融/知のLANDSCAPE』。7つの柱に金融に関わる歴史や偉人などのコンテンツを表示。タッチすると詳細な資料が読み解ける。
◎地下鉄大手町駅C14出口すぐ。9:00~18:00、不定休。丸の内1-3-2
☎03・6706・9020
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