ぶらりエキマチ散歩
八重洲

Vol. 19(2018年06月10日号)変わりゆく八重洲

さらに魅力が深まる東京駅東の玄関口へ

東京駅前一帯が変貌しようとしている。すでに八重洲二丁目北地区は解体工事の真っ盛り。さらに一丁目も再開発計画が発表されている。
「八重洲は時代ごとに姿を変えてきた街。僕はこれからの八重洲にワクワクしているんですよ」と、力強く笑うのは、『八重洲とよだ』4代目店主、富永一さんだ。八重洲一丁目界隈は、明治後期から大正にかけて日本橋花柳界で華やいだ土地。「踊りのお師匠さんも住んでいらしたのよ」と、往時を知る叔母のマコさんは懐かしむ。
東京駅開業から遅れて15年、関東大震災後の1929年(昭和4)に、八重洲口改札が設けられたが、街が大きく変わったのは戦後だ。
1948年(昭和23)、八重洲側に本格的な駅舎が建つと、料亭や待合が林立した地にビルが立ち並び、新幹線が開通すると、全国各地からの利用客が八重洲を闊歩するようになった。
「出張の帰り際に必ず立ち寄る常連の方もいらっしゃいます」とは、1953年(昭和28)から続く『BRICK八重洲店』の店長、小川さん。
そして、2020年の東京オリンピック後に、駅前の風景がまた激変する。
『八重洲ブックセンター本店』マネジャーの高杉信二さんは「不安がないと言ったらうそになります。でも、創業時のように前例のない、新しい本屋を作る面白さはありますよね。本屋は回遊すると、予測不能なひらめきに出合える場所ですから」。『八重洲とよだ』の富永さんは「街の魅力は結局のところ、人。心意気さえあれば、魅力のある街が作れるはず」と、目を輝かす。
しかも、現在地上に分散するバス乗り場が20レーンもの巨大バスターミナルとなって、3つの高層ビル地下に集約される。新たな東京の玄関口への期待に胸を膨らまさずにはいられない。

  • 『麻雀 姫』がある通り

細い路地がまとう暮らしの匂い

『麻雀 姫』がある通り

理髪店のサインポールや、店の看板が植栽に埋もれている『麻雀 姫』がある路地。戦災で焼け野原になった後、瓦礫の撤去から再興した八重洲は、高度成長期に続々と小規模ビルが林立するように。木造家屋と雑居ビルが無尽蔵に立ち並び、その隙き間を縫うように細い裏路地が走る。雑多なビル街に思われがちだが、プランターや観葉植物で路地が彩られ、八重洲の人情が垣間見えるようだ。
◎JR東京駅八重洲北口徒歩3分。中央区八重洲1-7
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  • 城東小学校旧校舎

かつて、駅前の路地裏に小学校があった

城東小学校旧校舎

八重洲二丁目北地区は、ひと足早く建物の解体工事が始まった。かつては科学の教育に力を注ぎ、校内で風力発電を行っていた『中央区立城東小学校』があったが、現在小学校は日本橋兜町の仮校舎へ。再開発後は再びこの地に戻り、最新鋭の複合ビルに小学校が入る。
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  • 八重洲とよだ
  • 八重洲とよだ

欲張りに味わいたい老舗和食ランチ

八重洲とよだ

『日本橋とよだ』より独立し、1913年(大正2)以来、八重洲界隈で営み続ける和食店。夜はアラカルトの他、コースも用意する。ランチはリーズナブルで、プリップリの大エビフライや、肉厚ながら柔らかな豚生姜焼き、香味にうっとりする刺し身など、選べる定食(写真は1720円)は満足必至だ! 
◎JR東京駅八重洲北口徒歩2分。11:30~13:30LO・17:00~21:00 LO、日・祝日・第2・4土休。八重洲1-6-5-15-1F
☎03・3271・9235
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  • 八重洲ブックセンター本店
  • 八重洲ブックセンター本店

回遊したくなる大型書店の先駆け店

八重洲ブックセンター本店

読書家だった鹿島建設の故鹿島守之助会長の「どんな本でもすぐ手に入る書店が欲しい」という遺志で1978年(昭和53)に設立。専門書を揃え、カフェも併設する書店の先駆けに。刊行記念講演会など「イベントは年200回ほどあります」と、マネジャーの高杉信二さん。手にする本は「土井善晴さんちの名もないおかずの手帖」。
◎JR東京駅八重洲南口徒歩4分。10:00~21:00(日・祝日は~20:00)、無休。八重洲2-5-1
☎03・3281・1811
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  • 昭和に築かれた街の風景
  • 昭和に築かれた街の風景

今のうちに見納めを!

昭和に築かれた街の風景

昭和初期から戦後の高度成長期にかけて築かれたビルが混在する東京駅前。一見、変哲のない風景だが、見上げればアーチ窓や円窓、三角の意匠などが、整然と連なっている。再開発が本格化する前に、改めて見ておきたい。
  • BRICK 八重洲店
  • BRICK 八重洲店

明るいうちから扉を開く老舗バー

BRICK 八重洲店

銀座に続き、1953年(昭和28)に創業。オールドボトルを陳列する1階と、カウンターやジュークボックスが目を引く2階とで風情が変わる。ウイスキーは100種と圧巻。山崎12年を練り込んだ自家製生チョコレート1190円が芳醇で、ハイボール480円と合う。
◎JR東京駅八重洲中央口徒歩5分。15:00~24:00(日・連休最終日は~23:00。2階は17:00~)、無休。八重洲1-8-11
☎03・3271・0374
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  • 八重洲二丁目北地区第一種市街地再開発事業

八重洲二丁目北地区第一種市街地再開発事業

解体工事が始まった八重洲通り南側は地上45階、地下4階、高さ約245mの大規模複合ビルを建設する計画だ。最新の性能を備えたオフィス、宿泊施設、中央区立城東小学校、子育て支援施設を併設。2022年竣工予定。
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  • 東京駅前八重洲一丁目東地区 第一種市街地再開発事業

東京駅前八重洲一丁目東地区 第一種市街地再開発事業

八重洲通り北側は、オリンピック後に解体が始まる計画が進行中。外堀通りに面した建物をいくつか残して、店舗、事務所のほか、医療施設も備えた地上54階、地下4階、高さ約250mのビルを建設する。2024年の竣工予定。
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